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CPV35 ATF交換考察
メンテナンスってことで、メンテナンスねたをもう一つ(^^)
AT車って言うとATF交換なんかも、結構重要なポイントなのだけど
俺なんか実際、このCPV35に乗る以前と来たら、交換せずにいるのが
普通で、交換なんかイランわ!派でした(爆!)
ディーラーなんかでも、10万キロ交換不要なんて言ってた記憶なんかも
あったり・・・(^^;
某カーショップで勧められても、聞き流していた。
この車では、定期的に交換するようになりました。
で、どうなのってことで貴重なインプレを。
どうぞ(笑)
これから本格化する夏に備えて強化ATFクーラーの装着とATF交換を実施しました。
今回作業をお願いしたのは、足回り(アライメント等)とATのスペシャリストを自称する
「東京自動車エンジン」さんです。
(yuji号やトシ号はここで「下回りアーシング」も施工しています。こちらも効果アリ!)
■施工時走行距離
18,642km
■強化ATFクーラー
DENSO製 放熱量4,700cal/h \45,000(工賃・税込み)
※三菱パジェロ純正装着部品
■ATフルード
Coastal社 Premium ATF G-Licensed (部分合成油) \12,000(工賃・税込み)
※強化ATFクーラーと同時施工のため、\5,000オフ
上記ATFはフィーリングに問題があったため、ちょうど1週間後の2004/07/03に
「WAKO'S HYPER-S + スキルAT(添加剤)」に全量交換しました。
経緯や理由など詳しくは拙著のパーツレビュー「AT/ATFに関する一考察」を
ご覧ください。
【強化ATFクーラー装着作業】
とにかく作業が早い早い。 トシ号をリフトに乗せるやいなやベテランエンジニア3人
がかりで(知る人ぞ知る石橋三兄弟♪)、イッキに作業を進めていきます。
今回、ATFクーラーの設置場所には悩みましたが、結局、当初予定していた右ロワー
グリルの奥ではなく、フロントグリル奥やや下方にしました。(下のFig.4参照)
ここなら、走行風も当たりやすいですし、ジアラグリル越しでも微妙に見えない場所
なので満足しています。
(何カ所も位置を変えながら、設置場所の相談に乗ってくださった社長に感謝。)
【ATF交換作業】
実質1時間強(!)でATFクーラーを装着し、ATF交換作業に入ります。
ついに出ました! 伝家の宝刀ATFチェンジャー!
圧送循環方式で効率よくATFを交換する(交換効率最大98%)という優れ物です。
ラインに圧力をかけて古いATFを押し出しながら交換するので、スラッジ等のゴミも
綺麗に回収できます。 (ただし、交換における注意点あり。詳しくは後述します。)
手際よくATFチェンジャーを繋いでスイッチを入れると、「シュバーン!シュバーン!」
という音と共に古いATFが流れてきました。(Fig.6)
『うわっ! く、黒い!!』 正確に言うと濃い茶褐色というべきか。。。チューブ越しに
キラキラした細かい粉が混ざっているのも分かります。 いわゆるスラッジですね。
交換作業自体は数分であっけなく終了し、古いATFを回収トレイに注ぎます。
こうやって見ると本当に汚れてますね。スラッジもかなり浮いてるし。(Fig.7、8)
この色を一度見てしまうと、「交換不要ってウソだよなー」と思ってしまいますね。
んで、シュゴゴーっと渦巻くATFを見ながら社長がポツリと一言。
『けっこう回してるでしょ。エンジン。。。』
『え?分かるんですか?』
『分かりますよ。汚れもあるけど、かなり焼けてるから。』
『あはは。。。(苦笑)』
ATFだけで、その人の乗り方まで分かってしまうなんて流石ですねー。
通常、走行距離2万キロ弱なら、ここまで黒くはならないそうです。(汗)
やっぱ、トシ号は強化ATFクーラーが必要だったんですね。
※ 圧送循環方式に関するウンチク
最近はディーラーやショップでも圧送循環方式のATFチェンジャーを見かけるよう
になりましたが、元々は「東京自動車エンジン」さんが世界で初めて開発した装置
であり、1988年に特許も取得されています。(現在パテントも切れてしまいましたが、
最近急速に普及してきたのも、この辺りに事情がありそうですね。)
【作業後 走行インプレッション】
次の方が控えていたので、御礼の挨拶もそこそこに帰路につきます。
まず気づいたのが、シフトショックの低下。
元々、CPV35のJATCO製5速ATはシフトショックの大きなミッションではないですが
(最新のトヨタ(アイシンAW製)よりは大きいかな?)、ATF交換後はシフトチェンジが
さらにスムーズになりました。(もしかしたら新車のときはこうだったのかなぁ。。。)
例の1段飛ばしシフトダウン(4速→2速)も、これまで「気持ち」ワンテンポ遅れるの
が気になっていましたが、レスポンスが早くなったので気分がスポイルされるような
こともありません。
正直言うと、もうちょっとシフトショックが大きくなるかなと思っていたんです。
ATFのトルク伝達効率はシフトショックとトレードオフですからね。
今回、私は純正ATF(日産マチックフルードJ)ではなく、他社製ATFへと交換しました。
確実にレスポンスアップしてますし、シフトショックも低下していますので、問題は無い
かも知れませんが、1~2ヶ月様子を見て、このままで行くか、純正ATFに戻すか、
はたまた他社製ATFに再交換するか考えたい(※)と思います。
※当初レスポンスアップしたように感じましたが、その後トルコンスリップの疑い
が強くなったため、1週間後に「WAKO'S HYPER-S + スキルAT(添加剤)」
に全量交換しました。
経緯や理由など詳しくは拙著のパーツレビュー「AT/ATFに関する一考察」を
ご覧ください。
さて、肝心の強化ATFクーラーの効果ですが。。。
正直、劇的な変化はありませんでした。でも、これもある程度予想通り。
ワインディングや長時間の高速走行をしたわけではないですからね。
これに関しては、来月の全国オフで様子を見ることにしましょう。
ただ、あの古いATFのドドメ色を思い出すと。。。強化ATFクーラーの装着で確実に
冷却性能はアップしているわけですから、精神的には非常に安心ですね。
【バシラー報告 その9】 AT/ATFに関する一考察
文責:トシ / 報告日:2004/07/11(Sun)
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【1】 はじめに
【2】 そもそもATFとは?
【3】 ATFは定期的に交換すべきか否か
【4】 ATFの交換方式
【5】 AT/ATFメンテナンス計画の決定
【6】 ATFの選び方
【7】 最後にもう一度。。。
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【1】 はじめに
あらかじめお断りさせていただくが、私はAT/ATFの専門家でも技術者でもない。
よって、本レポートはあくまでも一連のメンテナンスを通じて、ATおよびATFに興味を持ち、
素人なりに勉強した成果に過ぎない。
しかし、『ATのメンテナンスをきちんとやっていきたい。』、『AT車のスポーツドライビングに
おけるフィーリングを改善したい。』と考える方にとっては非常に有意義なレポートである
と自負している。
【2】 そもそもATFとは?
ATF(Automatic Transmission Fluid)は、ATミッションにおける作動油の役目を果たして
おり、非常に複雑な(二律背反する)機能を有している。すなわち、
・ 各部ギアやベアリングの潤滑/冷却機能
・ 変速を行うプラネタリーギアを制御する作動油圧および摩擦調整(湿式クラッチ)機能
・ トルクコンバーター(通称トルコン)部におけるトルク増幅/伝達効果を担う流体機能
よって、ATFに求められるのはとにかく「バランス」である。
例えばギアの保護だけを考えれば動粘度は高い方がいいが、粘度が高すぎて流動性が
悪いとクラッチの作動が鈍くなり、変速ショックが大きくなる。またベアリングなど回転部分
の潤滑性能を必要とされる一方で、湿式クラッチとしての摩擦剤の性能も要求される。
考えようによっては、自動車に使用される油脂類の中で最も厳密なチューニングとメンテ
ナンスが要求される作動油であると言っても過言ではないだろう。
【3】 ATFは定期的に交換すべきか否か
これはメーカーや整備業者でも見解が分かれるところであり、様々な文献を漁ってみても
「交換すべき」「交換すべきではない」と完全に論調は二分している。
一般的に言って、ATFはエンジンオイルなど他の油脂類と異なり「交換不要」とされており、
国内ほとんどの自動車メーカーが交換時期の指定をしていない。(一部欧州の自動車メー
カーの中には定期的な交換を推奨しているところも存在する。)
日産の場合も同様で、車両購入時に渡される整備記録簿(メンテナンスノート)にもATFの
交換時期に関する明確な記述はない。 (ただし、過負荷走行の多いシビアコンディション
車両のみ「6万キロごとの交換」を推奨。)
では、なぜメーカーではATF交換を推奨しないのか?
これには、米GMが世界初のAT車を発売した際に「メンテナンスフリー」を売り文句にした
ためとか、ATミッションの構造は非常に複雑かつ繊細なので、ATFの交換が逆に故障を
誘発してしまう可能性があるためとか、様々な理由があると言われている。
しかし、ATFはミッションケース内で常時高温に晒されながら、各部を制御/潤滑/冷却
しているのである。エンジンオイルと同様に劣化も起こすし、スラッジ(金属切削粉などが
固まったもの)も発生すると考えるのが当然ではないだろうか。
したがって、私は「各自の自己責任の下」という前提付きで「定期的な交換」を推奨する。
【4】 ATFの交換方式
ATFはエンジンオイルほど簡単に扱えるものでは無い。
きちんとした知識も持たず、ガソリンスタンドやカー用品店の店員に言われるままに交換
してしまうと、フィーリングの悪化や作動不良、場合によってはミッションオーバーホール
が必要なほどの故障に至ることすらある。
そのようなリスクを避けるためにも、ATFの交換方式を知ることは大変重要である。
【4-1】 上抜き方式によるATF交換
従来からある一般的なATF交換方式。
通常、ディーラーなどに『ATFを交換してください。』とお願いすると、この方法で交換して
くれることが多い。
交換作業自体は非常に簡単で、ATFのレベルゲージからホースを差し込んで古いATFを
抜き取り、同じ量だけの新しいATFを注入する。この作業を数回繰り返すことにより徐々
に古いATFが薄まり、結果的にATFを交換したことと同じ効果が期待できる。
ただし、交換効率は60%~70%程度と低く、またスラッジ除去効果も低い。
【4-2】 圧送循環方式によるATF交換
強化ATFクーラーの報告でも触れたが、東京自動車エンジンが考案したATF交換方式。
(ちなみに東京自動車エンジンでは1988年に特許を取得。)
最近は特許期間の終了に伴ってかなり普及してきており、ガソリンスタンドや大手カー
用品店の店頭で『ATFを交換してみませんか?』というPOP広告を目にする機会も多い。
交換作業には専用のATFチェンジャーが必要。(最近はATFの交換だけでなく、同時に
フラッシング(内部洗浄)や添加剤注入ができるものなど数種類のチェンジャーが存在
するようだ。)
具体的な作業方法は、まずATFのクーラーラインを外すか、ラインを途中で切断してATF
チェンジャーに繋ぎ、圧力をかけながら新しいATFを送り込み(圧送)、その圧力で古い
ATFを押し出していく(循環)。
交換効率は95%~98%程度と非常に高く、ATFラインやバルブボディ(ミッション内部の
油圧発生回路)に圧力をかけることができるため、スラッジ除去効果も高い。
しかし、その高いスラッジ除去能力はまさに「諸刃の剣」であり、新たなトラブルを誘発
してしまうことがある。つまり、バルブボディの内壁にヘドロのように張り付いていた大きな
スラッジが圧力で強制的に剥がされ、古いATFと共に押し出される途中で別の狭い回路
に詰まってしまう事態が時々あるのだ。
こうなるとまるで「寝た子を起こす」ようなものでタチが悪い。当然詰まってしまったバルブ
ボディは規定の油圧を発生できなくなるため、ATミッションは作動不良を起こす。
そのため、一般的に4~5万キロ近くATFを交換していない車両は、スラッジが大きく成長
している可能性があるため、作業を断られることが多い。
これはまさに人間の脳梗塞が発症する原理と同じであり、血管(=バルブボディ内圧力
回路)内壁から剥がれた血栓(=スラッジ)が脳内の毛細血管(=別の狭い圧力回路)
に動脈瘤となって詰まり、意識障害や言語障害(=ATの作動不良)を引き起こす様子
によく似ている。
【5】 AT/ATFメンテナンス計画の決定
ATFメンテナンスは非常に難しく、長期的な計画が必要である。
驚くかも知れないが、実は車両を購入した時点でAT/ATFメンテナンスに関する方針
を立てておく必要があると言っても過言ではない。
その方針を立てる上での選択肢は大きく分けて次の3つになる。
【5-1】 定期的に圧送循環方式でATFを交換する
交換のインターバルは約2万キロもしくは約1年~1年半。
最も重要なのは1回目の交換方式。 ここで今後のメンテナンス計画が決まるからだ。
もちろん「圧送循環方式」での交換がベストである。初期の馴染みで発生するスラッジも
ほぼ全量除去できる。
一方、もしここで「上抜き交換方式」を選択した場合には、初期スラッジを除去しきれない
可能性が高いため、【5-2】にメンテナンス計画を変更した方が良い。
また、何らかの理由で上記の交換インターバルを大幅に上回ってしまった場合も同様に
メンテナンス計画の見直しを検討されたい。
【5-2】 上抜き方式でATFを交換する
ATFは可能な限り【5-1】の「圧送循環方式」での交換を実施すべきだが、下記のような
条件に該当する場合は「上抜き方式」での交換をお薦めする。
(1) 初回(約2万キロ時)の交換で「圧送循環方式」を利用しなかった
(2) 新車購入後初めてのATF交換だが、約2万キロの推奨時期を大幅に超えてしまった
(3) 前回のATF交換から3万キロ以上交換していない
(4) 中古車両を購入しATF交換をしたいが、前オーナーのメンテナンス履歴が不明である
これは言うまでもなく、「圧送循環方式」によるAT版脳梗塞、すなわちスラッジ詰まりを防ぐ
ためである。
【5-3】 廃車までATFを交換しない
冗談のようだが、ATに負荷のかかるような運転をしない場合にはこの選択肢もあり得る。
CPV35の場合もシビアコンディションに該当する車両以外は交換時期を指定していないし、
下手にATFを交換してATミッションを壊すリスクを冒したくないという人もいるだろう。
少々話は逸れるが、「ATに負荷をかけない運転」とはどのような状況を指すのだろうか。
答えは簡単。穏やかに加速し、走行中は一定速度で走行、減速時もエンジンブレーキに
頼ることなくフットブレーキでゆっくり減速する。当然、フルスロットルやキックダウン、マニュ
アルモードの使用も厳禁である。
そんなの無理だって? その通り。特にVQ35DEのようなトルクフルなエンジンを持つ車両
の場合、ATには負荷を掛けっ放しだと思ってよい。
また、都市部のように渋滞やストップ&ゴーが多い走行パターンは、実はATに対する負担
が非常に高く、それこそシビアコンディションに該当すると言えるのではないだろうか。
【6】 ATFの選び方
さあ、ATFのメンテナンス計画は決まった。でも、ATFって何を選べばいいんだろう。
カー用品店に行くといろんなATFがあって値段もピンキリ。純正ATF以外は絶対に入れて
はいけないと聞いたこともあるし。。。
皆さんもこのような悩みを持っていないだろうか。かくいう私もその一人だった。
とにかくデリケートなATF選び。失敗しないためにもCPV35のATミッションを勉強するところ
から始めたいと思う。
【6-1】 CPV35のATミッションの特徴
※ ATミッションの仕様はマイナーチェンジ等で変更される可能性が高いため、ここでは
平成15~16年式のCPV35に関する説明と考えていただきたい。
CPV35に搭載されるJATCO製5速ATは、「フレックスロックアップ」と呼ばれる機能を
持っている。
(正確に言うと、「フレックスロックアップ」はトヨタ車が多く搭載するアイシンAW社製ATの
機能名称。しかし、トルコン制御の方法自体に大きな違いはないため、ここでは一般的な
「フレックスロックアップ」という表現を使わせていただく。)
「フレックスロックアップ」は、ATのロックアップ(直結)領域を拡大することによりトルコン部
の動力伝達効率を高めて、レスポンスアップやダイレクトなフィーリングを実現すると同時に
走行燃費を向上させる技術である。
具体的にはCPV35の場合、2~3速では3000rpm、4~5速では2000rpm以上でトルコン
がロックアップするように制御されている。
実はこのような低車速域までロックアップ領域を拡大するのは容易なことではない。旧来
のロックアップ制御のように一気にトルコン(クラッチ)を直結させてしまうと、低車速域では
大きなショックを伴うからだ。そこで最近のATミッションは所定の回転数でトルコンを微妙に
(フレキシブルに)滑らせて徐々にロックアップさせていくよう制御している。
このフレックスロックアップ領域では、スリップ回転数の制御に電子制御技術を用いるほか、
使用するATF自体の特性も利用している。
【6-2】 CPV35指定ATF(日産マチックフルードJ)の特性
現在、ATFの統一規格として主流なのは「DEXRONⅢ」であるが、最近はフレックスロック
アップ制御のAT向けに各社が独自のブレンドを施したATFを開発してきており、CPV35が
指定する「日産マチックフルードJ」もその一つである。
「マチックフルードJ」は簡単に考えて、「DEXRONⅢG」(Gライセンスとも言う)という規格
に相当し、これは従来の「DEXRONⅢ」に「剪断安定性(油膜の切れにくさ)」を加えて評価
した規格であるから、耐久性が非常に優れたATFであると言える。
また、フレックスロックアップ領域ではATF自体が摩擦剤となりながら、MT車における
半クラッチのような働き(流体クラッチ作用)を行うため、特殊な摩擦調整剤(FM剤)が
配合されていると考えられる。
一般的に静摩擦係数を高くすると、トルク伝達効率が良くなるため発進時/加速時に
おけるダイレクト感が向上し、動摩擦係数を高くすると変速時トルクが大きくなるため
変速時間の短縮に繋がる。
ただし、摩擦係数を高くしすぎると変速ショックが大きくなるため、バランスを考慮
しながら適切なFM剤が用いらているはずである。
【6-3】 社外ATFを選ぶ際の注意
前述の通り、「マチックフルードJ」はフレックスロックアップ制御式のATに適したATFという
だけでなく、ATFそのものが流体クラッチとして働くため、「マチックフルードJ」の使用を
前提にCPV35用ATミッションは開発されていると言っても過言ではない。
したがって、「マチックフルードJ」以外のATFを使用することは非常にリスクを伴うという
ことを肝に銘じておかなくてはいけない。
単なるフィーリングの悪化に留まればいいが、最悪の場合、フレックスロックアップ領域に
おける極圧的な作用が変化することでトルコン部における湿式クラッチが異常摩耗して
しまう可能性もあるのだ。(一般的に湿式クラッチはセルロース繊維(=パルプ材)が基材
になり、熱硬化性樹脂(フェノールレジン)でバインドされている。アラミド繊維やカーボン
ファイバーで補強されてはいるが、柔らかくてデリケートであることに変わりはない。)
したがって、社外ATFの使用はあくまでも自己責任である。
(この報告を読んで社外ATFを使用し、ATミッションを壊してしまったとしても私は一切その
責を負わないことを明言しておく。)
ただ、ATF交換の際に、シフトフィーリングを改善したいとか、もう少しダイレクト感が欲しい
と考えるのもまた人情と言うものである。
もちろん私もその一人だったわけで、現在は社外ATFを使用しているが、実は今のATFに
落ち着くまで一度失敗しているのだ。ここではその経緯を説明することで、後に続く方々
の「道しるべ」になれば、と考えている。
ちなみに私も「マチックフルードJ」への交換を検討しなかったわけではない。ただ、私が
お世話になっているディーラーは「圧送循環方式」を導入していなかったし、大手カー用品
店も何店か問い合わせてみたが、どこも「マチックフルードC」や「D」は置いているものの
「J」は在庫を抱えない方針ということで、ペール缶(20Lリッター!)単位での購入が条件、
と言われてしまったのだ。
【6-4】 私が選んだ社外ATF
最初に交換したATFは「Coastal Premium ATF G-Licensed」という製品だった。
2004/06/26に東京自動車エンジンにて強化ATFクーラーを装着した際に同時交換した。
「Coastal Premium ATF」は前述のDEXRONⅢGライセンスも取得しているATFだし、Z33や
V35セダンでも何台か交換しているがクレームが出たことはない、ということだったので
交換に踏み切ったのだが。。。
これが大失敗!! 交換当初はシフトショックも減少し、エンジンもレスポンスアップして
ビュンビュン回るので喜んでいた。しかし、帰宅する途中で何となく違和感を感じ始めた
ため、後日様々な走行パターンを想定した検証走行を実施してみた。
その結果、判明した症状は以下の通り。
・ シフトショックは確かに減少している
・ 自動変速モードでのシフトアップポイントが500~700rpmほど上がっている
・ エンジンの異常なレスポンスアップ (パーシャルスロットルでもレブリミッターに当たる)
・ エンジンの回転上昇の割にはスピードが乗らない
・ 低中回転域におけるトルク感が減少
・ 1速飛ばしシフトダウン(4速→2速)の際、エンジンブレーキの効きが悪い
つまり、まるでエンジンが空回りしているかのような感覚である。
マ、マズイ!これは明らかにトルコンスリップの症状だぞ!
翌日からは大騒ぎで次のATFを物色し始めた。ネットを検索したり、友人に聞いたり、ATF
製造メーカーに直接問い合わせたり。。。
そしてやっと辿りついたのが、「WAKO'S HYPER-S」という製品である。
これは、DEXRONⅢGライセンス規格相当であるのはもちろんのこと、「剪断安定性」や
「静/動摩擦係数の高さ」を明確にアピールした唯一の製品だった。
(他社でも「マチックフルードJ」互換ATFを発売しているが、見落としがちな「摩擦係数の
の高さ」にまで言及した製品は無かった。)
もちろんWAKO'S本社の技術課にも直接問い合わせた。そして担当者から、
・ 元々「剪断安定性」に優れるWAKO'S DⅢの3倍もの安定性を持つこと
・ 「マチックフルードJ」との比較試験で「摩擦係数」が上回ることが証明されていること
・ AT/ATFにとって分が悪い大排気量/高トルクエンジンを持ち車両重量も重いRV車の
ユーザーから非常に好評であること
などなど具体的かつ分かりやすい説明を受けるに及び、完全に心は決まった。
そしてそそくさと「圧送循環方式」で「WAKO'S HYPER-S」に全量交換してくれる店を探して
2004/07/03に再々交換を実施したのである。
(つまり、「Coastal Premium ATF」はたった1週間しか使わなかった。。。)
しかも念には念を入れて、ATF必要量10.3リッターのところ12リッターも使って古いATFを
押し出しておいた。果たして結果は。。。
大成功!! 前述の「Coastal Premium ATF」で感じた違和感が完全に払拭されただけ
でなく、トルク感やダイレクト感といったフィーリング面も明らかに向上したと言ってもよい。
そして、100キロほど走行した後でさらに、トルコンのクラッチ板に特殊皮膜を形成する
ことで無駄なスリップを抑制し、動力伝達効率を向上させるという「WAKO'S スキルAT」
というATF添加剤を投入。
この「WAKO'S スキルAT」投入直後はあまり変化を感じなかったが、50キロほど走行した
あたりからトルコンが「グイッ」と食い付くような感触が出てきてニンマリ。
【7】 最後にもう一度。。。
今回の一連のATメンテナンスにおいて、私はATFの選択に一度失敗したものの最後は
「WAKO'S HYPER-S + WAKO'S スキルAT」という組み合わせに辿り着くことができた。
しかし、ここで改めて言うが、社外ATFの使用はあくまでも自己責任である。
ATミッションは「超」が付くほどデリケートな構造を持つため、ATFの選択も「超」慎重に行う
べきだし、私も「WAKO'S」が今後長期的に見たときにどのような作用を及ぼすか全く見当
が付かない。
もしリスクを冒すのが恐いなら。。。
悪いことは言わないから、「マチックフルードJ」を使い続けるべきである。
それだけは確かだ。
この記事も同じく、CPV35FUNからの転用となります。
参考になれば幸いです。
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